手のひらの中の、金沢。
箸置きという道具は、日本の食卓において不思議な立ち位置にあります。なくても食事はできる。けれど、あると食卓の空気が変わる。箸を置くたびに、ほんの一瞬、手が止まる。その間(ま)が生まれること自体が、箸置きの役割なのかもしれません。
どいした工芸の金箔箸置きは、自然界の造形を思わせる有機的なフォルムが特徴です。型を使わず、ひとつひとつ手作業で成形しているため、同じ形はふたつとありません。岩肌のような凹凸、流木のような曲線 その表面を覆う金箔が、光の角度によって異なる表情を見せます。朝の柔らかな光と、夕食時の温かな灯りでは、まったく違う輝き方をする。日に何度も手に取る道具だからこそ、その変化が暮らしの小さな楽しみになります。
箔を貼る、という手仕事。
金箔は、厚さおよそ 1 万分の 1 ミリ。息を吹きかけるだけで飛んでしまうほど繊細な素材です。この箸置きの複雑な曲面に箔を貼るには、竹製の箔箸で一枚ずつ慎重に載せ、綿で押さえながら表面に密着させていきます。平面であれば比較的容易な作業も、凹凸のある立体では話が違います。箔が破れないよう、かといってシワにもならないよう、指先の感覚だけが頼りです。
使用する金箔は、金沢で製造された縁付(えんつき)金箔。伝統的な製法で打ち延ばされた箔は、機械打ちの断切(たちきり)箔と比べて柔らかく、複雑な形状にもよく馴染みます。一枚の箸置きに何枚もの箔を重ねることで、深みのある黄金の色味が生まれます。

木と金の、出会い。
箸置きとセットでお使いいただけるのが、同じく金箔をあしらった木箸です。天然木の箸の上部約三分の一に金箔を施しました。口に触れる先端部分はあえて木地のまま残し、手に持ったときに金箔の滑らかさから木の温もりへと、自然に素材が移り変わるよう設計しています。

箸を持ち上げる。食事をする。箸を置く。その繰り返しの中で、金箔の質感がふと指先に触れるたび、食卓が少しだけ特別な場所に変わる。どいした工芸が「さりげない幸福感」と呼ぶのは、そういう瞬間のことです。
使い方と、お手入れ。
金箔箸置きは日常使いを前提に制作しています。食事のあとは柔らかい布で軽く拭くだけで十分です。金箔は純度が高いため変色しにくく、時間が経っても美しい輝きを保ちます。ただし、研磨剤入りの洗剤や硬いスポンジでの洗浄は避けてください。使い込むほどに馴染み、わずかな経年変化もまた味わいになります。
ギフトボックス入りで、贈り物にもお使いいただけます。金沢を訪れた記念に、あるいは遠くに暮らす大切な方への便りとして 小さな箸置きが、金沢の光を —— 届けます。